2018年エランドール賞 授賞式レポート / 映画レビュー

2018/2/1のエランドール賞授賞式の興奮を伝えたくて、来年以降、一般参加を迷う人のために参考になればと思いレポートを作成しました。 ついでに映画鑑賞レポートです(ネタバレあります)

blank13 2018/02/18 鑑賞&舞台挨拶 レポート

引き寄せの法則とは本当に存在するのだろうか。

 

 

上映

 

今回の上映は、私にとって3度目の鑑賞となる。

ストーリーはもちろん、台詞も間合いも頭に入ってきているので、今回は少し視点を変えて楽しめた。

 

注目して見ていたのは、神野三鈴さんと波岡一喜さんの存在。

長男ヨシユキが実家のアパートで、余命三か月の父親の見舞いに行くかと母と弟に尋ねるシーン。

「また変な借金背負わされても、たまったもんじゃないしな」と震える声で毒づく弟コウジ、それに続き「俺もパス」の一言でさらりと続く兄ヨシユキ。

母さんは、の問いに、私は…行かない、と母。

一拍おいて答えた直後、左手を口元にあてがう仕草が、抑えていないと飛び出してきそうな自らの本音を物理的に押しとどめようとしているように見えた。薬指には結婚指輪がはめられている。

 

初見のときにラストで感じた、夫婦のストーリーが、こんなところにも散りばめられていたことを知り、その新鮮さに感じ入った。

 

そして波岡一喜

恥ずかしい話だが、劇中に出てくる取り立て屋が波岡一喜だと頭の中でつながっていなかった。

役者と役柄がつながった後、改めて、波岡一喜、ものすごい役者だと痛感した。知った上で意識して見たからこそ波岡さんだと思えたが、完全にストーリーの中に彼自身が落とし込まれていて、それはもう見事なのだ。

彼演じる取り立て屋は、要所要所、物語のキーとなるポイントで登場するのだが、その存在感は圧倒的だ。

 

舞台挨拶 

司会は水野悠希アナウンサー。原作者のはしもとこうじ氏の奥様だ。

斎藤監督に紹介された際には、何かのお役に立てればと思い司会を引き受けましたとコメントされていた。

 

まずは上手より高橋一生の登場。

昨日の大阪舞台挨拶が全身真っ白衣装だったため、東京は真っ黒なのではと冗談で言っていたのだが、本当に黒づくめの衣装での登場となった。

黒ジャケット、黒カットソー、黒パンツ。革靴を履いて、髪は少しコテで巻いてある。

 

高橋一生登壇直後、司会の水野さんから、「今日は他にもゲストが来ているんですよね、高橋さんのお友達といったほうがよろしいでしょうか」と意味深なご案内が。

どよめく会場に、波岡一喜斎藤工の登壇。

心の中では「団吾師匠!!」と大喝采だった。

今回は波岡さんに注目して鑑賞したいと思っていた矢先、まさかの本人ご登場で大感激。

 

2,3日前に急遽、斎藤工波岡一喜の登壇が決まったそう。

舞台挨拶中盤で、高橋一生が昨日の大阪は一人だったからべらべら喋っちゃって、と話すと、波岡一喜が「予定空いてたのに」と返していたので、本当に呼んでいたら行ってくれていそうな感じでした。

 

司会から、「皆さんけっこうお付き合いが長いんですよね」と振られると、高橋一生とについて、ボクシングのドラマで共演して以来と波岡。

1ポンドの福音ですねと思いながら、これを機にもう一回見直そうと決意。

 

共演者の話になり、水野さんからのフリで山なり兄さんの話が再出。

「フジテレビの番組でも話していらっしゃいましたが村上淳さんとはお付き合いが長いんですよね」と高橋一生に話を振る。

テレビでも放送されたバスケの上手い山なり兄さんの話を高橋一生が語り、それをうんうん相槌を打ちながら聞く波岡一喜

「山なり兄さんが雑誌にめちゃくちゃ出てて~」の下りで、波岡一喜から「メンズノンノやろ?」みたいなコメントもあり。

テレビでこの話が流れたときに、ちょうど村淳が見ていたらしく、すごい喜んでたよと斎藤工。それに驚きながら、よかった~と目をぱちぱちさせる高橋一生

 

後半は波岡一喜高橋一生を褒める褒める。「事務所の先輩の六角精児さんも言うてたけど、俳優で飲んだりすると、だれがうまいとかって話しになって、高橋一生って名前が挙がるとみんなが高橋一生はうまいって同意する。今回の作品もそう。」

 

高橋一生波岡一喜は、完成後初めて作品をみたタイミングが一緒の試写会だったそう。波岡氏が、おっきい帽子の人がおるわーと思ったら一生さんだったと。

こういう細かい情報がファンにとってはうれしい。

 

鑑賞直後、波岡一喜はハチ公前からシンガポールにいた斎藤工に電話をかけたと。俳優として邦画はうがった見方をしてしまうが、この作品はそんなこと全くなくて本当によかったというようなコメントで、斎藤工波岡一喜のことを本音で評価してくれる人だから、めちゃくちゃよかったと言ってくれているのがすごく伝わってきたと斎藤工

 

斎藤工監督より、撮影自体は一週間で終わったけれど、編集に半年かかった。何度も何度も同じ映像を見るが、見るたびに高橋一生が新しい見え方をして。

 

皆さんも二度三度見て楽しんでほしいと最後締められた。

 

主観

 

高橋一生は、気の知れた仲間との登壇だったからか表情は明るかったが、照明の問題か、終始顔にお疲れの色が見えて気になった。

話すときは壇上の人物の顔を見ながら話していたが、マイクを下ろしている間は、足元か、2階の映写室あたりを見ていることが多かった。

 

他の人が話している最中に客席と目を合わせると、きゃあきゃあ言われるので気を遣っているのかなと感じたり。真意はわからないけれど。

 

立ち位置が下手に水野アナウンサー、高橋一生波岡一喜斎藤工の順だったのだが、冒頭にも書いたが照明の問題か、とにかく高橋一生の顔が暗い。

 

きっと影が落ちていたのだと思うが、目の下が暗くて、クマができるほどお疲れなんじゃないかと心配になった。たぶん、実際は本当に照明の問題かと思うが。

 

これから舞台挨拶をまだ控えているということなので、体調に気をつけながらこの作品を多くの人に届けてほしい。

blank13 (2018年公開)

 映画に限った話ではないが、上映時間が短い映画も長い映画も、最後のシメが肝心だ。どんなに後半に向けて盛り上がった作品でも、納得のいかないラストではすべてが台無しだ。

 

 本作のラストシーンは家族が長年暮らした古アパート。共用廊下を映しながら聞こえてくるのは、告別式シーンで故人のカラオケ定番曲として挙げられたテレサ・テンの「つぐない」を口ずさむ母の歌声。喪服姿の母はアパートの中で窓際に腰かけている。愛煙家だった父の煙草を手に取り、慣れない手つきで火をつける。吸い込んだ煙にむせながらも、漆黒の喪服に白い煙をくゆらせる。絵画のように美しかった。

 

 緊張感ある前半も、客席から笑い声が聞こえていた後半も、すべてこのラストのためにあったのだ。映画のどのシーンがよかったかと聞かれて、ラストシーンがよかったと言える作品が私は好きだ。ラストに向けて積み重ねてきたものが実を結ぶその瞬間に、思わず、してやられたとにんまりする。

 

 2人の息子にとっては、ろくでなしにしか見えない、母に苦労ばかりかけていた大嫌いな父。母だって、あんな父は顔も見たくないだろう?だから見舞いにも行かなかったし、葬儀にも出たくないのだろう?息子たちはきっとそう思っていたに違いない。

 

 告別式に参列した父の知人たちによってつまびらかにされる父の横顔。息子たちは自分の中の父親像とのかい離に戸惑う。

 

 息子から見た父の顔。同じ父が、家庭の外で見せていた顔。母から見た父は、また別の顔を持っていたのである。

 

 人間の多面性を、その面を向けられる人たちの言葉で表現しているのがおもしろい。

 

 鑑賞前は、作品ポスターの構図や配役から、親子の風景を描いた作品だと思っていた。

 そうではなかった。息子たちの知らないその昔の、母と在りし日の父を思い、私は、描かれていない物語に思いを馳せた。

 

 弔い方はひとつではない。故人とのつながりを思い、そのつながりに即して弔うこともできるのだ。葬儀は故人のためでなく、残された人々のためにあると常々思っているが、自分たちが救われるための弔いをいまいちど考え直す機会となった。

NOTE:エランドール賞授賞式 一般参加を検討している方へ

2018年のエランドール賞授賞式に一般参加した私は、インターネット上に授賞式の情報が少なく、事前に情報収集するのが難しいと感じた。

そこで、なにかの参考になればと思い、行ってみて気づいた点、事前にわかっていればよかった点を書き出してみた。レポート本文と内容が重なる部分もあるがそのあたりはご容赦を。

 

新人賞は人生にたった一回。来年以降、好きな役者が受賞したけれど一般参加を迷っている方がいたら、ぜひ参考にして足を運んでみてほしい。

 

 

・事前準備

・服装

ドレスコードなしとエランドール賞公式ページに記載がある。しかしながら、メインの参加者である映画・ドラマ関係者は仕事で来ているため、男性はスーツ、女性もセットアップやワンピースなどセミフォーマルが多かった。私は結婚式などでも着用するワンピースにジャケットを羽織り、低めのヒールを合わせて行った。ホテルという場所柄を考えても、少しおしゃれに気合を入れていくくらいでちょうどよさそうだ。

 

・持ち物

参加費。以上。

正直他には何も必要性は感じなかった。

私はパーティーバッグの中に、財布、スマートフォン、ハンカチ、ティッシュ、簡単なメイク道具を入れていたが、受付で財布を出した以外は会場内が暑くてハンカチで汗を拭いた程度。化粧を直す暇なんてないのでメイク道具を持ったのは失策だった。

なかったほうがよかったと思ったのはカイロ。2月だったので、昼間仕事中に貼るカイロを腰に忍ばせていたのだが、うっかりそのまま会場に来てしまい、とても暑い思いをした。

 

・会場到着後

*授賞式開催場所が2018年と同じく新宿京王プラザホテル南館5Fエミネンスホールであった場合に限ります*

 

・クローク

5Fの会場に行く前に、まず寄ってほしいのが3Fのクロークだ。3Fはホテル本館と南館の共通フロアなので迷わずに行くことができると思う。

コートやハンドバッグなど、授賞式に集中するために不要なものはなるべく預けたほうがいいだろう。

 

・受付

会場前で受付を済ませる。参加費を払って名札をもらう。特に名前の記入などは求められなかった。

名札といえば、授賞式の後半に抽選会があり、名札に記載のある番号で参加ができたようだ。受付で特に案内がなかったので私は気づかなかったのだが、授賞式開始前に名札の半券で参加ができたらしい。後の祭りであった。

 

・写真/ビデオ撮影

当然だが、写真もビデオも撮影禁止。報道関係者のみ、受付で報道と書かれた名札をもらっていて、会場内で撮影をしている。

 

その他、思い出すことがあったら追記する。

2018年エランドール賞 授賞式 出席レポート

2018年 第42回エランドール賞 授賞式・新春パーティー

場所:新宿京王プラザホテル 南館5階エミネンスホール

日時:2018年2月1日(木)18時30分~20時30分(18時00分開場)

 

 

 

いきさつ:

 高橋一生という役者を認識したのは、映画「シン・ゴジラ」(2016年公開)であった。彼が演じた安田というオタクな文科省職員は、出演時間だけ見ると大して長くは感じなかったが、登場シーンのいちいちで、セリフが、佇まいが、作品を彩り、劇場を出た後も私の記憶にとどまった。

 スクリーンで見た彼に再会したのは翌年の1月、ドラマ「カルテット」(2017年放送)。何気なくつけていたテレビから流れてきた弦楽器の調べに心ひかれた。ゴジラの映画で見た人だと気づいてから、役者・高橋一生の存在が私の脳内の大半を占めるに至るまでは、あっという間の出来事だった。そこから友人に勧められて彼の出演作「民王」(2016年放送)をレンタルビデオショップで大人借りし、その後次々と放送される彼が出演するテレビドラマ、立て続けに公開される映画を片っ端から見ていった(ドラマ「おんな城主 直虎」、「わろてんか」、「民衆の敵~世の中、おかしくないですか!?~」、「THIS IS US 36歳、これから」映画「3月のライオン」、「THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY - リミット・オブ・スリーピング ビューティ」、「嘘を愛する女」(2017~2018年放送、公開)、残念ながら過去出演作はあまりにも数が膨大で、まだまだ全作を視聴するに至っていない。)新しい作品の放送・公開が迫るたび、テレビ誌や映画誌、ファッション誌などにも取り上げられ、彼の掲載を追いかけていると息をつく暇もない。ひいてはCMにも引っ張りだこで、新しいCMが決まるたびに、テレビで見るだけでは飽き足らず、街中に掲示される巨大な広告ポスターを見るためにだけに都内の駅を渡り歩いた。

 そんな私に幸運が訪れたのは忘れもしない2017年11月20日のこと。仕事から帰宅した私を待っていたのは一枚のはがき。普段手にするダイレクトメールなどではない、映画「嘘を愛する女」の試写会当選を知らせるはがきであった。前述した高橋一生出演作の中で触れた本作は、大変ありがたいことに一足早く試写会で堪能させて頂くことができたのだった。私が初めて高橋一生を直に見た瞬間である。会場に入ってきたときのはにかんだような笑顔、会場全体に向かい大きく手を振るサービス精神、ころころ変わる表情。普段テレビでは見られなかった、作品の役柄ではない、「高橋一生」という存在に触れることができたと思った。3階席まであるホールC(於:国際フォーラム)の1階席に座ることができた私は、彼が登壇している間中、穴が開くほど見つめていた。時間にして30分ほどであったかと思うが、私が感心したのは彼が微動だにせずステージに存在していたことだ。90度に開いた両足、前で組まれた両手。凛とした佇まいが今でも鮮明に思い出される。どっしりと構えた大樹のようで、画面越しではない彼の存在を確と感じたのだった。感無量、このような場に居合わせることができて、なんて幸せなのだろう。もう一生分の運を使い果たしたに違いないと確信していた。

 一生に一度と目に焼き付けた私であったが、2018年1月31日に2度目のチャンスが回ってくることとなった。インターネットで見つけた、エランドール賞新人賞受賞者の記事。高橋一生の名前がそこにはあった。歴史ある賞を授与される彼に、なぜだか私まで誇らしくなった。その時に、気づいたのだ。2月1日に開催されるエランドール賞授賞式の詳細をたどると、あまり目立たない記載ではあったが一般参加の文字があるではないか。彼の授賞式に立ち会うことができるのか。その瞬間私の頭は大混乱だ。実際のところ、受賞者発表があったのは開催日より一週間ほど前であったらしいのだが、私が授賞式の存在に気付いたのが開催される2日前。時間がないのである。幸いなことに都内在住の私は、なんとか都合がつけられそうだ。ただ気になるのは授賞式の詳細である。ホテルの宴会場で行われる授賞式、一般参加の参加費はなんと15,000円だ。映画を見に行くより格段に高く、舞台を見るよりもまだ値が張る。一体どのようなパーティーが行われるのか。ひたすらインターネットで情報を集めたところ、過去の参加者がブログにレポートを書いているのを数名見つけたが、なにせ情報量が少ない。平日夜の開催かつ一般参加費用の高さから、そもそも一般参加者が少ない業界パーティーなのだろうという想像はついた。さて、どうするべきか。ドレスコードなしの立食形式のパーティーとなっていたので、一人参加でも問題はなさそうだ。しかし、やはり心細い。好きな役者が受賞者(高橋一生以外に、門脇麦竹内涼真杉咲花ムロツヨシ吉岡里帆が新人賞を受賞)の中にいないか、映画は好きではないか、それならパーティーが好きではないか、手あたり次第に友人に聞き漁った。結果、惨敗。開催の2日前に予定を立ててひょいひょい出てこられるほうが珍しいのか。見たいけど参加費が高い、行きたいけど仕事があるなど理由は様々だが、残念ながら私のまわりに趣味・時間・予算の三拍子がそろった友人はいなかった。

 こうして考えると、好きな役者が新人賞を取り、時間を割くことができて、参加費も喜んで払おうと思える私はなんと恵まれた境遇なのだろう。友人たちに参加可否を聞きながらも、開催までの間の仕事帰りに着々とパーティーバッグやアクセサリーをそろえていた私は、心細いなどと言いながら、もしかして一般参加の文字を見つけた瞬間から、一人であろうが必ず授賞式へ行くと心を決めていたのかもしれない。かくして私は一人でエランドール賞授賞式に臨むこととなったのである。

 

開場:

 授賞式当日、仕事の都合で会場には開場時間18時00分を回ってからしか到着することができなかった。本当は受賞祝いのお花を買って、高橋一生さんに渡してくださいとダメもとで受付の方に頼んでみたかったのだが、会場に到着することだけで精一杯でプレゼントを用意することはできなかった。

 最寄りの新宿駅に到着したときすでに18時00分をまわり、私は非常に焦っていた。何せ初めて参加するエランドール賞授賞式で勝手がわからない。少ないだろうとあたりをつけてはいるが、一般参加者はどれくらいいるのか。受け付けはスムースに済ませられるのか。高橋一生見たさに今年度はファンが殺到して、会場に入りきっていなかったらどうしよう。結論から言うとこのように思いめぐらせたのはすべて杞憂であった。

 新宿駅西口から続く地下道を抜けてすぐ左手に見えるのが新宿京王プラザホテルだ。正面入り口ではないので、適当な場所で回転ドアを見つけ中へ入る。会場は南館5Fエミネンスホールだ。新宿京王プラザホテルには本館と南館がある。ホテル内で迷子になって時間をロスしたくはない。回転ドアを入るとすぐにエレベーターがあったため、これは南館に行けるだろうかときょろきょろとガイドを探す。そこで目についたのが隅にぽつんと置かれた表示案内板だ。「4,5階へお越しの方は左手エスカレーターを上り3階クロークでお荷物をお預けください。(ここは2階です)」とある。荷物を預けて5階へ行きたい私にとっては願ってもないご案内だ。外から入ってきたので、てっきり1階にいると思っていた私には最後の注意書きもありがたい。早速、エスカレーターに乗ると真ん前にクロークの文字が見える。2人のホテルマンがいるカウンターに、3名ほどしか並んでいない。滞りなくコートと荷物を預け、パーティーバッグだけの身軽な姿になる。荷物を預かってくれたホテルマンの女性に南館5階へ行きたい旨を伝えると、エミネンスホールですかと察しをつけてくれ、丁寧にエスカレーターの乗り継ぎを説明してもらえた。教えてもらった通りに進むと、5階でまず待っていたのはスーツ姿で立ち並ぶ業界人と思しき方々と白いクロスがかけられた受付カウンターだ。主催者サイドの関係者であろうスーツの男性たちが、受付を済ませた招待客らに声をかけ歓待している様子が目に入る。私は受付カウンターの端の一般という立札の置かれた位置で受付の女性に声をかける。その時点で18時15分ほどであったと思うが、驚いたことに、誰一人として一般列に並んでいる者はいない。一般一人お願いしますと声をかけチケットを買う。15,000円ですという案内に、お金を取り出そうとするがチャックが引っ掛かりバッグを開けるのに手間取ってしまう。昨日買ったばかりの慣れないバッグを使うからだ。駅を猛ダッシュしてたどり着いたこのホテルで、格好をつけながらロビーを歩いてきたのに、もたもたする自分に恥ずかしくなる。受付の方にゆっくりでいいですよと声をかけてもらえたのも、後ろに並んでいる参加者がいなかったおかげだと思う。支払いを済ませ、チケットと名札ケースをもらい、一般と書かれたチケットを見えるところに付けるよう指示される。このチケット、日時や場所が記載されていて、すでに会場にいる参加者に果たして必要な情報だろうかと少々首をひねる。参加費15,000円という金額までしっかりと記載されており、なんだか気恥ずかしい。名札をジャケットにつけ、受付のまわりを見渡すとたくさんの花輪が陳列されている。新人賞受賞者の名前入りの花輪を一通り見渡し、いざ会場へ足を踏み入れる。

 観音開きの会場入り口に立つと、まず目に入るのは正面のステージだ。いや、ステージの前の人だかりといったほうが正確だろう。料理の並ぶテーブルが入り口からステージまでの間に花道のように設置されている。入り口でファーストドリンクを受け取り、ステージのそばへと歩いていく。驚くべきは何といっても人だかりとステージの近さだ。授賞式が始まるまであと10分ほどといった段階で、ステージ前最前列で絨毯に座る記者やカメラマンの方が20名ほど、その真後ろに報道ビデオカメラが立ち並んでいる。その報道ビデオカメラの背後にはなんと一般参加者が取り巻いている。ステージまでの距離は目算で5m強といったところか。あまりにも近い。カメラのすぐ後ろにはすでに場所をとっている一般参加者がいたが、その後ろに立てばすぐそこにステージが見える。ざっと見渡しても一般参加者は50人ほどしかいないように思える(ちなみに、業界パーティーであるため、関係者であるほとんどの人たちはスーツ姿でグラス片手に会場のあちこちで歓談しているのだが、一般参加者は私然り、ステージ前に陣取っているのですぐにわかる)。

 グラスを持つ手が震える。もうすぐこのステージに高橋一生が立つのだ。この距離で、映像ではありえない、最新の瞬間を見ることができるのだ。授賞式が始まるまでの間、何度かグラスに口をつけたが、緊張と興奮で手が汗ばんできたので、授賞式中にグラスを落としては台無しだと思い、申し訳なかったがすぐに飲みかけのグラスを下げてもらった。そこから、飲まず食わずの2時間の始まりである。エランドール賞授賞式は立食形式のパーティーだと前述したが、つまりいる場所は自由、どんなにいい場所にいても料理を取りに行った瞬間、周りにいる人に自分のいた場所を取られてしまいそうだ。早々に授賞式中は動かない決心をし、ステージ真正面からやや上手に位置を決める。前の人の頭が被りはするが、間を縫えば壇上の人物の頭の先からつま先まで眺めることができる。授賞式開始はすぐそこに迫っている。

 

エランドール賞授賞式:

 ここからは式次第に沿って、記憶の限り文字に起こしていきたい。各受賞者へ花束を持って登壇したプレゼンターは、監督やプロデューサーなどの肩書が覚えられなかった方が多かったため、その場合は一様にスタッフとさせていただく。

 

・開会18時30分

司会:郡司恭子(NTVアナウンサー) エレクトーン:永田勝子

 授賞式の開催が告げられ、日本映画テレビプロデューサー協会主催のエランドール賞授賞式と長ったらしい名前が読み上げられる。よく噛まずに言えると感心しているところで司会者の自己紹介が入る。上手いはずだ、本職のアナウンサーではないか。私の居場所からは見えなかったので気づかなかったのだ。あとで人の隙間からちらっと見えた郡司アナウンサーはブルーのノースリーブのワンピースをまとい、テレビで見かけるとおりのかわいらしい笑顔だった。授賞式途中ではエレクトーン奏者の紹介も入ったが、人だかりのせいで、どこで引いているのかは最後まで分からなかった。彼女は受賞者の登壇シーンの効果音を演奏していた。

 

・開会挨拶/来賓挨拶/乾杯

 日本映画テレビプロデューサー協会文化庁、日本映画放送株式会社からそれぞれご挨拶があった。昨年の邦画興行収入が一昨年の歴代一位の記録に迫る勢いだったこと、テレビは廃れたと言われるが録画視聴率も合わせると20%程となることなど、全般の総括である。

 

「プロデューサー賞、プロデューサー奨励賞」

・映画 プロデューサー賞 「三度目の殺人

 プレゼンターとして是枝裕和監督が登壇。「三度目の殺人」プロデューサー松崎薫氏とは4度目のタッグということで、相性がいいということなのでしょうと話されていた。その4本中3本はオリジナル脚本で映画化したものだということで、好きな作品が作れることの喜びを語っていた。

 

・映画 プロデューサー奨励賞 「22年目の告白-私が殺人犯です-」

 スピーチの終盤に、映画館で映画を見てくださいとあったのが印象的だった。私は映画館で見る映画が好きで、多いときは週に一度映画館へ足を運ぶ。映画館の客足が伸びるために、いい映画が増えることに加えて、制作サイドが関知しない部分かもしれないが、チケット代がもう少し安価になればと思う。一概に比べられないが、映画館のチケットの値段は万国様々で、ワンコインで1本映画が見られるような話を聞くと心底うらやましい。私は映画界の発展を切に願っている。プレゼンターは失念。

 

・テレビ プロデューサー賞 「カルテット」

 土井裕泰氏、佐野亜裕美氏が登壇。佐野氏のコメントで、自分たちが面白いと思い作りたいと思うものを作ってできた作品だとあった。まだまだテレビドラマも捨てたものではない。プレゼンターとして、カルテットに来杉有朱役として出演した吉岡里帆が登壇。本日初の出役の登場だ。ステージに立つ彼女に会場も沸き立つ。来杉有朱という役が視聴者に受け入れてもらえるか撮影前から不安だったこと、松たか子さん、満島ひかりさん、松田龍平さん、高橋一生さんと一人ずつ名前を挙げ、その現場に関われた幸せを語っていた。先の佐野氏のコメントにも触れ、共感を示していた。放送から1年経った今でもカルテットを好きでいてくれる人がたくさんいることを嬉しそうに語る彼女。例にもれずカルテットファンである私は有朱ちゃんのかわいさに胸が高鳴る。淡い色のビッグシルエットのワンピースで、ひどく高いヒールのサンダルを履いている。ワンレンボブのウェットヘアでつるつるの肌がまぶしい。カルテットの脚本家・坂本裕二氏の名前を出し、有朱の最後のセリフである「人生、ちょろかった」は今も私の背中を押してくれますと言ったとき、引用とはいえ劇中のセリフが聞けたことが収穫であった。

 

・テレビ プロデューサー奨励賞 「ひよっこ

 私は「ひよっこ」を見ていなかったのだが、受賞した菓子氏の珍しい苗字と、スピーチ中にスタッフ、キャストへ細やかに感謝を示す姿勢に日本放送協会の看板を感じる。プレゼンターは主人公みね子の母を演じた木村佳乃。登壇の瞬間、会場から細いとため息交じりに感嘆の声が上がる。白い襟付きシャツに黒のジャケット、パンツもダークグレーでシックな装いだ。またしても高すぎるヒールに私は驚嘆する。晴れの舞台に立つとき、女優は皆、足を犠牲にしているのだ。

 

・テレビ プロデューサー奨励賞 「奥様は、取り扱い注意」

 好きで見ていたドラマなので、受賞作になっているのがなんだかうれしい。主演・綾瀬はるか特殊工作員の過去を持つ専業主婦を演じ、激しいアクションシーンが話題となった。プレゼンターとしてその綾瀬はるかの名前が読み上げられた瞬間、会場からどよめきが起こる。背が、高い。顔が、小さい。とてつもなくスタイルがいい。画面で見ていてもきれいな人だと思ってはいたが、本物は格別だ。スピーチはあまり得意ではないようだが、こぼれる笑顔ですべて打ち消しにされる。クランクインの3か月前からアクションの練習に取り掛かったため、普段のドラマよりもスタッフとかかわる時間が長く、濃い時間を過ごしたと話していた。

 

「特別賞」

・「精霊の守り人」制作チーム

 作品名が読み上げられた瞬間、なるほど、こういう流れかと手を打った。「奥様は、取り扱い注意」の直後であれば、まず間違いなく綾瀬はるかが再来するであろう。おそらく会場中の誰もがそう思っていたと思うが、予想は的中する。名前は失念したが、受賞者の方が綾瀬はるかの主人公・バルサの演技を、渋いという言葉で表現していたのが印象に残る。私は「精霊の守り人」は原作の児童文学は読了しているが、ドラマを見ていなかったため、この作品での綾瀬はるかの印象を何も持っていなかった。笑顔輝く綾瀬はるかのイメージが私の中にはあるが、どれ、渋いバルサを演じる綾瀬はるかを見てみようかという気にさせられた。撮影時期が重なっているのかは分からないが、2作に共通するアクションシーンで、新しい綾瀬はるかの魅力が発見されたことは間違いない。

 

・「やすらぎの郷」制作チーム

 半年間にわたり放送された昼ドラの新境地。日中は仕事で見ることのできない私は録画していて、まだ最終話まで見られていないので、ネタバレがないか少しひやひやした。2019年度に今度は1年間のクールで新たに「やすらぎの刻~道」の作成が決まっていると少々宣伝も入り、現代の高齢社会を見事に描いた群像劇の二作目に期待がもたれる。

 

・アクターズセミナー受賞者紹介

小出薫/鈴木勝大真凛(欠席)/百瀬美鈴/谷口翔太/唯月ふうか

 趣旨をあまり理解していなかったのでアクターズセミナーとは何ぞやと思いながら見ていたが、授賞式後に調べたところによると、新人俳優を育成し才能発掘をするセミナーらしい。受賞基準はよく分からないが、皆さんのスピーチを聞く限り、芸歴は様々で長く俳優をしている方もいるようだった。

 

「新人賞」

高橋一生

 待ちに待った、本当に待ちに待った高橋一生の登壇だ。新人賞受賞者紹介の前に、授賞式の始まる前からステージに設置されていた金屏風がスタッフにより端に避けられる。フラッシュ対策だろうか。準備が済むと、新人賞受賞者紹介のアナウンスに会場から今までにない歓声が上がる。ステージ上手からゆっくりと登壇する高橋一生。近い。とてつもなく近い。以前の受賞者でも近さは十分に感じていたが、思い入れのある役者では格別だ。ステージの上手側に立ち、まずはステージ後ろに紹介映像が投影される。そうか、金屏風を避けたのはこのためだったのか。2017年の出演作の一コマ一コマの写真がスライドショーで映し出される。郡司アナが紹介を読み上げる中、ピンスポットライトの中で微笑みながら直立する高橋一生。美しい。黒のスーツに黒の革靴、白シャツにグレーのチェック柄の蝶ネクタイが「わろてんか」で彼が演じる伊能栞を思い起こさせる。注目したのはヘアスタイルだ。去年の11月に彼を見たときは全体的に長めで、重めの前髪もサイドに流していたが、今回は全体にレイヤーが入っていて遊びが効いている。長め黒髪というベースは変わらないのに、なぜだろう、とても若々しく見える。もともと年齢よりも若く見えると思っていたが、前回見た時よりもさらに若々しい。彼が壇上に立ち、紹介スライドショーが背景で流れている間、会場からはたくさんの人が手を振っている。さすがに名前を呼んだりはできないが、私も我慢できず手を振った。彼は会場を見渡しながら微笑みを返してくれる。以前、試写会で見かけたときはしょっちゅう手を振ってくれたのに、今回が控えめな対応なのは授賞式というフォーマルな舞台のせいだろうか。

 スライドショーが終わるとステージ中央で賞状・トロフィー・記念品(銀座和光の置き時計だったようだ)の授与が行われる。賞状を読み上げられながら、覗き込むように文面に見入っており、時折相手の目を見て聞き入っているのが印象的だった。あとから分かるが、以降の受賞者には以下同文とだけで本文の読み上げはないので、こんなシーンが見られたのは彼がトップバッターだからである。ちなみに受賞順は男女交互でそれぞれ五十音順となっている。

 賞状・トロフィー・記念品を順番に受け取ったあと、トロフィーを手に中央のマイクでスピーチが始まる。初めまして、高橋一生です。やはり声がいい。低い声は安らぎを感じさせその人をさらに何倍も魅力的にする。

 「カルテット、おんな城主直虎と、2017年の活躍をこうして評価して頂きましたが、これは2017年以前の積み重ね、出会った作品、人によって今があります。高橋一生にあんな役をやらせたいと、これからも皆さんの想像力を掻き立てられる役者でありたいと思います。」

 簡潔ではあったが、もちろんもう少しスピーチは長かった。しかしながら、私自身が高橋一生を前に頭がうまく働かなくなるもので、細部まで思い出すことができない。好きな役者のスピーチが思い出せないのは悔しくてならない。

 受賞者としての高橋一生のスピーチの後、プレゼンターとして登壇したのはなんと「おんな城主直虎」で主人公を演じた柴咲コウだ。なんと直虎と政次は新宿で笑顔の再開を果たしたのだ。柴咲コウから大輪のバラの花束が贈呈される。その後、柴咲コウが中央マイクの前に立ち、その斜め後ろに高橋一生という配置で、プレゼンタースピーチが始まる。ここの部分も残念ながら高橋一生を目で追うのに必死であまり柴咲コウのスピーチ内容が思い出せない。役者としての誉め言葉が並び、また共演したいと話していたように思う。スピーチ内容が思い出せない私がその間目に焼き付けたのは、斜め後ろでスピーチを聞く高橋一生だ。彼が後ろに下がった時に、胸元に抱える白い花束の陰に一輪の真っ赤な花が見えたような気がした。受賞者はみな、紅白の名札を付けているのだがそれだろうか。と思った直後、彼の胸から名札が取れて床へと落下した。花束があたり取れてしまったのだろう。サッと拾い上げるも、会場から小さく笑みが漏れると思わず柴咲コウが振り向く。何でもないから続けてというジェスチャーで応える高橋一生。その後立っている間中、パンツの右脚部分が膝のところで少し持ち上がってしまっているのが気にかかった。この瞬間はどこかの局で映像として流れるのだろうか。私の胸の中に残る、会場に行ったからこそ見えた思い出のワンシーンとなるのだろうか。

 

門脇麦

 ここが今回の授賞式での最大の反省点だ。門脇麦のスピーチを何も覚えていないのだ。高橋一生に中てられたとしか思えない。非常に申し訳ない。

 

竹内涼真

 上下白のスーツで登場。足元はタッセル付きの黒いローファーだ。最近出演しているソフトバンクをイメージした白スーツなのかと思ったが、特に服装に触れる瞬間はなかったので分からない。彼の出演作は、「帝一の國」(2017年公開)、「過保護のカホコ」(2017年放送)、「陸王」(同)を見ているが、キレイどころの役が多い印象だ。東京ヴェルディユースに所属していた過去を持ち、そこからモデル・役者へ転身と、非の打ちどころがない。初めて実物を見たが、画面で見る以上にさわやかでかわいい男の子、もう少し年齢・経験を重ねて汚い役もできるといいねと応援している。

 スピーチも、こんばんは、竹内涼真です、とテレビで見たままの喋りをする。プレゼンターには、ラグビー経験者というスタッフの方が。二人が壇上で楽しそうに談笑するのを見て心が和んだ。マイクが一本なので会話が聞こえるわけではないが、表情から楽しそうなのが伝わってくる。

 

杉咲花

 小さい、これが第一印象だ。そして衣装のセンスがいい。白のシースルーのワンピースが、まるで彼女のために作られたかのようにぴったりだった。細く白い体は、弱く守りたいものの象徴のように思える。一言一言を選びながら、会場で聞く人々の様子を窺うように話すしぐさが印象に残る。

 

ムロツヨシ

 本日の主役はムロツヨシだったといっても過言ではないだろう。正直、高橋一生のための授賞式くらいに思っていた私は間違っていた。私にとっては紛れもなく高橋一生あっての授賞式であったが、会場の雰囲気としての話だ。まず名前を呼ばれ壇上に上がった後、背後で流れる自身の紹介スライドショーに向かってバスガイドさながら右手を返し、そらどうだと言わんばかりに見せつけてくる。おとなしく腰の前で両手を組んだかと思えば隠れているほうの手でピースサインを作り会場を笑わせる。マイクなし、動きだけで会場を彼のワールドへと誘い込む。さすがは喜劇役者といったところか。

 ムロツヨシです。エランドール新人賞を受賞しました役者、42歳です。いままで表彰なんてされたことのない人生でした。トロフィーを手にするのは初めてです。関係者に聞いたところによると、どうやら僕は歴代最年長での受賞となるようです。エランドール新人賞受賞の連絡をうけたとき、新人賞っていうのはどういう意味で?と思わず聞き返しました。調べてみたところによると、新人賞は一年を通じて最も活躍した将来有望な新人俳優に贈られる賞であると。42歳にして将来性を感じてもらえるとはなんと光栄なことでしょう。役者になって23年、初めての表彰です。20代の頃、書類で落とされてばかりで、皆さんの前に立つような仕事はありませんでした。30代になり福田雄一監督と出会いました。好きなように演じてと言われ、僕の役者人生が変わりました。直接は言わないので、この場を借りて福田監督にお礼を言いたいと思います。そしてマネージャー。ちょうど10年前の2月、まったく仕事のなかった僕に、マネージャーをやらせてくださいと頼み込んできました。まったく仕事のない俳優を10年でエランドール賞新人賞受賞俳優にまで育て上げたマネージャーに皆さん拍手をお願いします。2か月前、「おんな城主直虎」の打ち上げで僕は言いました。5年後、ムロツヨシ主演の大河を撮ってほしいと。スケジュールは空けておきますと宣言したわけです。NHK関係者は誰も目を合わせてくれませんでした。ただ、皆さんどうでしょう。5年前、ムロツヨシがエランドール新人賞をとるなんて誰が予想したでしょうか。僕が5年後大河の主演をはることがないなんて言えますか。僕には将来性があります。さて、この後の花束贈呈ですが柴咲コウさんから花束を渡していただけると思います。

 というフリの後で、プレゼンターとして登壇したのは福田雄一監督。花束を下に向け、そっけなく渡しながら、出づらいじゃないかとまずはお小言。袖で隣に柴咲コウさんがいたので代わりに出てくれと頼みましたが断られましたと苦笑いを見せた。42歳ムロツヨシの受賞について、日の目を見ない20代30代の役者の励みになるとコメントしつつ、5年後の大河について主演ムロツヨシを最も生かせる脚本が書けるのは僕だと思いますとしっかりとアピール。喜劇の大河がみられる日も近いのだろうか。

 

吉岡里帆

 最後の受賞者として、名前を呼ばれ袖からステージ上へ。紹介スライドショーが上映される中、もっと前へとスタッフから立ち位置を指示されると、勘違いしてしまったようでステージ中央へ。違う違うと引き戻されようやく上手前方へ収まる。本人は恥ずかしそうだったが、ステージ上をちょこまか走る姿には心和まされた。

 スピーチの段となり、序盤にカルテットのプロデューサー賞の一幕を踏まえ、プレゼンターの吉岡里帆ですと自己紹介。そこから自分の役者としての人生を振り返る。

 駆け出しのころ、通いで東京に撮影に来ており、一泊2,000円、3,000円の共同シャワーのアパートに泊まり、少し冷たいシャワーを浴びるたびに、自分の進むべき道に対し迷いが生じていたという。スピーチの間中、私なんかがこんな素晴らしい賞を、というような控えめなコメントが多かったが、最後にエランドール賞の受賞が今後の仕事の励みになります、一生頑張りますと力強く宣言していた。

 プレゼンターとして登場したのは、ヒロインを演じたドラマ「ごめん、愛してる」(2017年放送)の脚本家・浅野妙子氏。前段のスピーチを踏まえ、あなたはメインを張れる女優よと力強く言葉にする。脚本を書きながら、吉岡里帆を思い出すことがある、彼女ならどんな風に演じるだろうと。幅の広い演技のできる役者だと、終始褒めちぎっていて、自信のない里帆ちゃんにはとても暖かく響いたのではないだろうか。浅野氏のスピーチの後半、里帆ちゃんは涙がこらえきれず、両手で目頭を押さえていた。最後二人で降壇する際も、浅野氏に先導されていたが、ステージを降りる直前に会場に向き直り、深々と一礼した彼女を見て、今後も彼女を応援していきたいと思わされた。

 

・舞台上フォトセッション

 新人賞受賞者6名が一斉に登壇し、メディア向けのフォトセッションが始まる。立ち位置を指定され並んだ6名だが、トロフィーの準備に少しだけ時間がかかりしばしフリータイムのような雰囲気に。郡司アナから、今の間に素敵な笑顔をご堪能くださいとつなぎが入り、ムロツヨシがおどけているのを目の端でとらえたが、やはり基本は高橋一生一点集中。彼が目の前にいる間、ほかの場所を見ている余裕はないのだ。トロフィーが各自に手渡され、上手から下手へ目線を徐々に移していく。目を細めレンズを見つめる高橋一生。心なしか、やせたような気がする。首元が細く、忙殺されているのではと不安になる。笑顔が控えめなのも疲れのせいだろうか。

 

 フォトセッション後、抽選会、閉会挨拶があるが、関係者向けであるため一般参加者はそこで中座する。会場に残ることもできるだろうが、目的はすでに達成されている。

 

ありったけの運を使い彼を初めて実際に見た試写会、自力でこぎつけた今回の授賞式。このような機会に恵まれる運というのは有限だろうか。有体に言う、日頃の行いで引き寄せられるものだろうか。本当のところはわからないが、自身の持ちうる運を好きな役者との出会いに引き当てられる私は心底幸運だと思う。